第4フェーズ: 既存仮設住宅の住環境改善プロジェクト
Phase 4: Project for the Improvement of Existing Temporary Housing

 

ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)では、宮城県女川町にコンテナを利用した2,3階建ての仮設住宅を建設しました。たとえ仮設でも快適な住環境を目指すべきである、という考えのもとで計画されたこの住宅は、完成した現在では多くの評価をいただいています。
震災から一年、復興が速やかに進み、仮設住宅から復興住宅へ少しでも早く移行することは、安心した将来を描くうえでも非常に重要です。一方で、移転のための宅地造成や地盤のかさ上げを行うプロセスを考えると、仮設住宅での生活が長期に及ぶことが予想されるのも事実です。

そこで、VANでは、宮城県女川町を対象として仮設住宅の住環境改善プロジェクトを行います。
第一段階として、さまざまなメーカーによって建設された既存の仮設住宅を訪問し、VANボランティアと仮設住宅にお住まいの方々との対話をしながら、住環境の問題点について明らかにする調査を実施します。
第二段階として、そこで明らかになった問題点についての検討を行い、少しでも心豊かに暮らすことができるために必要なものを作って現地へ提供することを計画しています。

この最初の問題発見のための調査として、3月4日から11日までの間、町内30ヶ所の仮設住宅団地への訪問調査を行いました。コンテナ仮設住宅の造り付け家具の製作設置に携わったボランティアを中心に、のべ20人が参加し、全1294世帯のうち426世帯を訪問しました。聞き取り内容は、調査対象者の属性、住まいの満足度・満足点・不満点・住居内外の改善要望、部屋の使い方などを中心に行いました。

*今後の予定
6〜7月をめどに、今回の調査で明らかになった問題点に対して改善策の実施を行います。

 

 

聞き取り調査結果

仮設住宅住環境改善プロジェクトとして行った聞き取り調査の結果についての概要を報告します。

調査概要
調査日時:2012年3月4日(日)~3月11日(日)
ボランティア参加数:20人
訪問実施状況(全30団地)
女川第一小学校グラウンド (訪問18世帯/全57世帯)
町民多目的運動場 (訪問55世帯/全154世帯)
清水地区① (訪問32世帯/全94世帯)
旭が丘北側地区 (訪問17世帯/全33世帯)
旭が丘南側地区 (訪問10世帯/全17世帯)
旭が丘ゲートボール場 (訪問7世帯/全16世帯)
石巻バイパス用地 (訪問44世帯/全236世帯)
針浜地区 (訪問15世帯/全40世帯)
旧女川第三小学校グラウンド (訪問10世帯/全25世帯)
清水地区② (訪問14世帯/全50世帯)
小乗地区 (訪問7世帯/全31世帯)
高白浜地区 (訪問6世帯/全19世帯)
横浦浜 (訪問8世帯/全24世帯)
大石原地区 (訪問2世帯/全6世帯)
石巻蟹田地区 (訪問10世帯/全31世帯)
石巻内田地区 (訪問8世帯/全23世帯)
宮ヶ崎地区 (訪問8世帯/全9世帯)
指ヶ浜地区 (訪問7世帯/全14世帯)
飯子浜地区 (訪問3世帯/全9世帯)
旭が丘一丁目地区 (訪問4世帯/全7世帯)
向地区 (訪問3世帯/全10世帯)
野々浜地区 (訪問3世帯/全11世帯)
小屋取地区 (訪問1世帯/全6世帯)
桐ヶ崎地区 (訪問7世帯/全23世帯)
塚浜地区 (訪問1世帯/全6世帯)
旧第三保育所 (訪問8世帯/全8世帯)
出島町営グラウンド (訪問7世帯/全42世帯)
新田地区① (訪問15世帯/全56世帯)
町民野球場 (訪問80世帯/全189世帯)
新田地区② (訪問16世帯/全48世帯)
計(訪問426世帯/全1294世帯)

調査方法
ボランティア調査員を二人一組とし、各住戸を訪問し、調査票に合わせて聞き取りを行いました。

聞き取りを行った項目
・現在の仮設住宅への満足度
・満足/不満足に関わる具体的な項目(遮音性能、断熱性能、収納など)
・住戸、団地、町内のなかでの要望
・集会所の利用頻度
など

仮設住宅の分類
町内30団地には、全11社の建設メーカーによる住宅が建設されています。この住宅メーカーを以下の三つに大別しました。
 1)プレハブ建築協会 規格建築部会 (メーカー数6社 団地数24)
 2)プレハブ建築協会 住宅部会 (メーカー数4社 団地数5)
 3)コンテナ仮設住宅 (メーカー数1社 団地数1)

1.住まいの満足度について




プレハブ協会規格建築部会(以下規格部会)の仮設住宅の満足度は「普通」が最も多く(44.2%)、プレハブ建築協会住宅部会(以下住宅部会)の仮設住宅は「まあ満足」(41.2%)、コンテナ仮設住宅も「まあ満足」(45.2%)が最頻値となっています。住宅部会仮設住宅とコンテナ仮設住宅が比較的満足されている世帯が多くなっています。
「仮の住まいとしてある程度の不便や欠点を許容できるかどうか」が居住者の基準になっているようでした。

2.満足/不満足に関わる具体的な項目について




・遮音性能/隣室の騒音の問題について
「隣の物音が聞こえにくい」と回答された世帯は、規格部会仮設住宅2.6%、住宅部会仮設住宅8.7%、コンテナ仮設住宅26.3%でした。遮音対策を考えて設計されたコンテナ仮設住宅の満足度が高い結果となっています。
隣家との遮音については、周囲の物音が気になるのと同時に、自分の発する音に対しても神経質にならざるを得ないようでした。コンテナ仮設住宅でも、多層建築物特有の問題として、上階からの物音を気にされる意見が少数ながらありました。


・ 住戸の収納について
「収納の多さ、広さが十分で物が収まる」と回答された世帯は、規格部会仮設住宅0.9%、住宅部会仮設住宅5.2%、コンテナ仮設住宅11.3%でした。収納に関しては、造り付け収納を標準装備したコンテナ仮設住宅で比較的満足度が高く、住宅部会仮設住宅でも掃き出し窓上部に収納スペースが設けられるなどの工夫がありました。その他、収納不足を補うために家具などを購入して設置されている世帯も多くありましたが、ほとんどの場合、追加した家具のせいで部屋が窮屈な印象をもたらしているようでした。


左:吐き出し窓上部に設けられた収納(針浜地区) 右:コンテナ仮設住宅収納利用の様子(町民野球場)


購入した家具をおいた部屋の様子(女川一小グラウンド)


・キッチン/風呂/空調など設備について
「キッチンが広く調理しやすい」と回答された世帯は、規格部会仮設住宅1.3%、住宅部会仮設住宅2.6%、コンテナ仮設住宅7.5%でした。コンテナ仮設住宅では他と比べてあらかじめキッチンが広く設計されており、それが反映された結果となっています。

左:規格部会仮設住宅のキッチン周り  右:コンテナ仮設住宅のキッチン周り)


「お風呂の追い炊きができない」と回答された世帯は、規格部会仮設住宅23.8%、住宅部会仮設住宅21.7%、コンテナ仮設住宅18.8%でした。追い炊きについてはどこの仮設住宅を回っても聞くことができた意見で、シャワーで済ませるといった方や公衆浴場を熱望される意見が一定数ありました。
「エアコンの効きが悪い、数が少ない」という回答はコンテナ仮設住宅のみ21.3%ありました。これはエアコンの場所が悪いことと、吹き出し口の直下にある棚板やカーテンに風があたり、うまく循環しないことが原因であると推測されます。そのため、風の流れをよくするために樹脂製の板を取り付け、カーテンの位置を下げる追加工事を行って改善を図っています。


改善策を示す図

追加工事を行ったあとの様子


・その他
買いものの利便性、交通アクセス、近所づきあいの有無、子供の遊び場の有無などを評価に挙げられる方が多く、部屋の中の問題だけでなく部屋の外の因子も仮設住宅の満足/不満足に影響を与えていました。

3.集会所の利用状況について




集会場の利用については「よく利用する」が回答数62、「利用する」が回答数51、「たまに利用する」が回答数42、「あまり利用しない」が回答数56、「利用しない」が回答数81でした。「よく利用する〜たまに利用する」、「あまり利用しない〜利用しない」でほぼ半々となる結果でした。しかし、出かけていたり、居留守を使ったりとインタビューを行えなかった方のことを考慮すると、実際の利用割合はもっと低いと考えられます。
しかしながら、定期的なお茶のみ会に出かけたり、不定期にはボランティアやNPOなどによるイベントが開催されたりと、集会場として一定の役割を果たしているようでした。
ただ、集会場の利用者のほとんどが中高年の女性で、さらにメンバーもほぼ固定化しているようであり、若年層や男性、また人見知りなどで人の輪に入ることが苦手な方にとっては行きづらい場所になっているようでした。

左:集会所利用の様子(針浜地区) 右:支援物資配布場所として機能する集会所(町民野球場)

4.あると便利な施設について


希望する施設では、スーパーマーケット(104)やコンビニ(61)など買いものに関する施設を希望される方が多く、次いで温泉/銭湯(58)、その後病院(14)、宿舎(13)が続きます。項目内に含んでいませんでしたが、バス路線の拡充や、吹きさらしの停留所をなんとかしてほしいという交通インフラに関する要望、また、ポストやコインランドリー、精米所など普段の生活に関わる希望も寄せられました。

5.まとめ

入居者に話を聞いていると、仮設住宅に対しそれなりの不満は持っているようでした。しかしながら今の仮設住宅は今後数年のうちに出て行く「仮の住まい」だという意識が非常に強く、多少の不便や欠点は我慢できるのでお金や手間をかけてまでこれ以上室内に手を加える必要性をあまり感じないという意見が多く聞かれました。
そういった中で、住まいに対する満足/不満足な点として、室内の問題に止まらず、団地レベル、町内レベルでの生活環境に入居者の目が向いてきている傾向があり、生活を充実させる施設やサービスに関する回答が多く寄せられました。
特に、集会所利用の活性化や、団地に住む人々がもっと気軽に集まって情報交換や親交を深められる場所が求められているようでした。